計画班紹介
A01班
脳分子を回収して帰還する「はやぶさ型ナノマシン」の開発
研究代表者:安楽 泰孝
機関:東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻
研究分担者:中木戸 誠
機関:東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻
研究協力者:津本 浩平
機関:東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻
研究の目的:
脳内に局在する病因関連分子は、1血液中への移行性が著しく低い、2脳内分子情報を回収する微小透析膜法が確立されているが回収可能な分子に制限がある、などの事由から臨床的に病因関連分子の早期発見・診断法へと展開するのが困難です。そこでA01班では、これまでに確立したBBBを効率的に通過する高分子集合体(ナノマシン)を基盤技術とし、高分子化学、材料科学、蛋白質工学的観点からさらに洗練し、薬剤を疾患部位に送り届ける従来の薬剤送達シ ステムではなく、既存技術では着想もしない「BBBを効率的に通過」し、「脳 分子の回収」、さらに「血液中に帰還する」という異なる機能を空間的に制御された形でナノマシン構造内部に適確に配置することで、脳分子情報を知らせる『はやぶさ型ナノマシン』技術基盤を構築します。
A02班
ストレス性情動障害に関わる細胞外分子脳病態解析
研究代表者:竹本 さやか (木村 さやか)
機関:名古屋大学 環境医学研究所 神経系分野I
研究分担者:宮田 茂雄
機関:群馬大学 大学院医学系研究科 遺伝発達行動学分野
研究協力者:上田 修平
機関:名古屋大学 環境医学研究所 神経分野I
研究の目的:
精神的ストレスによって引き起こされる情動障害は様々な精神疾患の病態に関与し、分子機序の解明は喫緊の課題となっています。例えば情動障害を示すうつ病では、複数の病態仮説が混在し未だ混沌としており、特に治療標的やバイオマーカー候補へと直結する細胞外分子の解析は不十分です。そこでA02班では、ストレス性のうつ病モデルをはじめ様々な病態マウスモデルを用い、生体脳における細胞外分子に着目した病態解析を実施します。従来法では検出が困難であった、微量かつ幅広い分子種(神経伝達物質、神経ペプチド、核酸、代謝物 など)の網羅解析をA03班(極限検出)と共同で実現し、情動障害を引き起こす細胞外分子脳病態の包括的な理解を目指します。また、A01班で開発を進める高分子ナノマシンをこれらの病態モデル動物に適用することで、医学研究や臨床応用へとつなげるために必要な基礎的知見を得ます。
A03班
微量脳内分子の完全網羅解析を実現する極限検出システムの開発
研究代表者:川井 隆之
機関:九州大学 大学院理学研究院 化学部門
研究分担者:太田 誠一
機関:東京大学 大学院工学系研究科 総合研究機構
研究協力者:谷口 雄一
機関:京都大学 高等研究院 物質ー細胞統合システム拠点
研究の目的:
脳内部の分子動態を解き明かすためには、脳機能を損なわない程度の極微量の脳内分子を非侵襲的に採取し、miRNA・分泌タンパク質・神経ペプチド・代謝物などの各種生体成分を高感度かつ網羅的に解析するシステムが不可欠です。しかし、微量スケールでこのようなマルチオミックス分析が実現された例はありません。そこでA03班では、電気泳動・質量分析・ナノ材料化学・信号増幅・一分子検出などの独自分析技術を融合することで、微量脳内成分を網羅解析するための「極限検出システム」を開発します。またA01班と連携し、ナノマシンの生体分子捕捉特性の解析およびフィードバックを実施し、高い採取効率のナ ノマシン開発を支援します。A02班との連携では、うつ病などのモデルマウスの微量脳試料を解析することで、分子病態の理解を支援します。
アドバイザー(50音順)
- 狩野 光伸(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授)
- 染谷 隆夫(東京大学大学院工学系研究科 教授)
- 浜地 格(京都大学大学院工学系研究科 教授)
- 森田 由子(日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任)
- 柚崎 通介(慶應義塾大学医学部 教授)